Side朝陽

ここから先、凪波の日記は数枚、破り捨てられていた形跡があった。
凪波はお世辞にも、字が綺麗とは言えない。
でも、1つの文章を丁寧に書くから、まっすぐな線が目立つ字だった。
日誌を書くときも、とても時間をかけていたのは覚えている。
そんな凪波のメモの字が、どんどん荒くなっていって、最後には読めるか読めないかの字になっていた。
本当に同一人物が書いたのか?
誰かが凪波を語って、嘘をここに残したのではないだろうか。
そのように疑ってしまった方がずっと楽だった。

このメモの通りであれば。
凪波は、体を売ったのだ。
お金のために。
夢のために。
そして凪波は、そんな辛い状況にも関わらずたった1人で耐え続けていたのだ。
俺を頼ろうとはしなかったのだ。
凪波にとって、俺は助けを求めるに値しない人物だった。
そんなことを突きつけられて、俺はただ、虚しくなった。

数枚破かれたページの次に、凪波の日記が再び始まっていた。
そこに書かれていた最初の文字は……一路朔夜だった。