Side朝陽

血相を変えて入ってきたのは、藤岡だった。
最初は、見知った顔が見れて、安心した。
はずだったのに。

「藤岡、どうしてたんだよ、一体」

藤岡は何も言わない。
ただじっと俺を見つめている。
目が真っ赤に腫れているのは……分かった。

「お前……何があった……」

俺は、藤岡に近づこうとしたが

「ごめん、海原」

藤岡は、強い言葉で俺の行動を遮った。

「ごめん、ほんとごめん」
「何がだよ……どうしたんだよ……?」
「ごめん……でもこれが1番良いんだよ……」

藤岡は、俺に繰り返し謝ってくる。

「お前……何に謝ってるんだ……?」

嫌な予感がした。
藤岡という人は、強い。
こんなに目を真っ赤にするほど泣き腫らした様子なんて……ほとんど見たことがない。

「おい……藤岡……まさか……?」
「海原……ごめん……でも……」

藤岡は、ぼろぼろと涙を流しながら、俺に残酷な宣言をした。

「私は、凪波を諦める」