Side朔夜

この山田という男は、俺のスケジュールを完璧に理解していた。
具体的な作品名や共演の相手。
どこのスタジオでの仕事なのか。
誰が音響監督なのか……。

クライアントの許可が降りるまで、声優はどの作品のどの役をやっているかという情報は他人に漏らしてはいけない。
まして、その収録に関わる情報など漏れるはずがない。
守らなくてはならない、機密事項だから。
それを守らない場合は、コンプライアンス違反として一気に業界からの信頼を失う。

……そんな情報を、山田という男は僕に言ってきたのだ。

「……何故それを知っている!?」

僕は、動揺を隠せなかった。
何故なら山田という男は、さらにこう続けてきたから。

「あなたのマネージャーに問い合わせて確認いたしました」