Side朝陽

「それでは、失礼します」

山田さんが室内に入ってくる。
その綺麗な歩きで、俺も前をあっさり通過して、一路の前に立った。
それから、持っていた鍵で、一路の手錠を外した。

「何故……」

一路も、尋ねた。

「今日は10時から、シチュエーションCDの収録があるとお伺いしている」
「何故それを知ってる……?」
「清様がそうおっしゃっていましたので」

悠木先生が……一路のスケジュールを知っていた?
一路の表情を見ている限り、一路も戸惑っている様子だ。
つまり、一路が直接悠木先生に伝えたわけでは……なさそうだ。
……まあ、俺が入ってきた時の様子を考えれば、呑気にスケジュールを教えた可能性もないな。

と言うことは、一路のスケジュールが分かる何かを、悠木先生は見たのだろうか。
スマホとかアナログの手帳とか……だろうか。
そういやぁ……一路は、荷物とか持っているのか?
見たところ何も持っていなさそうだが。

あの機械がたくさんある部屋を考えてみれば……悠木先生にとってはスマホの盗み見くらいは普通にできそうな気がした。
だからきっと、どうやって情報を知ったは、重要ではないのだろう。

その時、山田さんが一路に何かを耳打ちした。
すると、一路が目を大きく見開いて、山田さんを睨みつけた」

「……何故それを知っている!?」


それは、演技なんかでは隠しきれない、一路の本物の動揺だと、俺には何故か分かってしまった。