Side朝陽

「何だって……?」

聞き間違いか?
ここに俺たちを閉じ込めておいて……?
一路も、口をあんぐりと開けている。
目はそんなに変化がないので、美形が残念な間抜け顔になっているというのはこの際おいておく。

「山田……さん……?」
「はい、海原様」
「ど、どういうことですか。ここに……俺たちを閉じ込めたはずでは?」
「はい?」

山田さんは、表情を変えずに声だけで驚きを表現した。

「私はただ、お茶に案内しただけでございます」
「え」
「さらに申し上げますと……時間になりましたら、お迎えにあがりますと、先のお伝えしたはず……で、ございますが」
「……え」
「はい」

俺は急いで一路の顔を見るが、一路は素知らぬ顔。
そして……静寂が訪れてから、俺は急に恥ずかしくなった。
馬鹿か、俺は。
勘違いしていた。完全に。
と言うより……。

「おい、一路」
「…………っ……」

本当に小さくだが、聞こえた。

「お前……今俺を馬鹿にしたな」
「何のことだ」
「とぼけんな!マジでお前性格悪いな!」

一路は、そんな俺を小馬鹿にした微笑みを浮かべた。
くそっ……さっきまでは同情すらしたというのに。
そして、改めて思い出した。

こいつが、今日本で1番売れている声優だということ。
それは決して、顔と声だけで築き上げた実績ではないということを。