Side朝陽

俺はフォークを手にして、手錠の穴に突っ込んでみようとした。
我ながらいいアイディアだと、本気で思った……の……だが……。

「……海原……」
「……言うな……」
「まさか本気で……できると思ったのか……?」
「だから言うなって!」

フォークの先端は確かに細い。
が、その先端の1本を穴に突っ込むには、他の先端がぐにゃりと曲がらない限り不可能。
そして俺は、残念ながらフォークを曲げられるほどの力はない。

「くそぉ……」

ガシガシと無理やり穴にねじ込もうとしてみたけど、やっぱり無理だった。

「海原……お前……普段からそうなのか?」
「何が」
「穴に、無理やり入れ込もうとするのか?」
「はあ?」

穴と言えば、ボタンの穴に、コンセントの穴か……。

「そりゃあ……入れないとどうにもならないだろう」

俺の答えに、一路は「ふふっ」と、この場にそぐわないように微笑した。

「な、何だよ……」

さっきから、何なんだ。
こいつが言おうとしていることが、よく分からない。

「安心したよ……」
「何が」

一路は、ちらと俺の股間の部分を見てから

「君……凪波を抱いてないね」
「はああああ!?」