Side朝陽

「分かった……」
「っ……!本当か!」
「ああ……」

一路が、俺の提案を受け入れてくれた。
その事実が、俺をゾクゾクさせた。

「そうと決まれば……」

俺が気になっているのは、一路の手錠をどう外すか、だ。
さすがに、このまま一路を出すわけにはいかない。
凪波と俺の運命を決めるかもしれない人物に、一路を接触させるのだから。
まず俺は、一路の手錠に触れてみる。

「何をしている?」

一路が不思議そうに聞いてきたので

「いいから黙ってろ」

とだけ返し、鍵穴の部分を確認した。
本物に触れたことはないが、ちょっと力を入れれば壊れそうな素材だった。
きっと、おもちゃだろうと思った。
俺は周囲を見渡して、鍵穴に入りそうなものを探す。

ふと、一路がさっき滅茶苦茶にしたアフタヌーンティーのテーブルが目に入る。
ケーキがぐちゃぐちゃになってるだけで、食器類は全部無事だ。
もちろん、高そうな食器には手をつけられない。
弁償と言われたら……俺の小遣いが多分吹っ飛ぶ。

何か、ないか……。
手錠の鍵穴に入りそうで、壊しても問題なさそうなもの……。

「あっ……!」

銀色のフォークが、地面に落ちていた。
窓から入り込む朝日の光を受け止め、キラキラと輝いていた。