Side朝陽

俺が一路から聞いた話は、おそらく事実だろう。
ここまできて、一路が嘘をつくメリットがどこにもない。
もし自分が一路の立場で、宮川のりかに迫られたら……。
いや……どちらかというと、襲われた……なのか?
どちらだとしても、俺だったらメンタル確実にやられた。
仕事どころじゃない。

「なあ……一路……」
「何だ」
「結局……その後仕事はどうなったんだ?」
「どうなった……というと?」
「うまくいったのかって、聞いてるんだよ」
「ああ、それはもちろん」
「…………そうか」

仕事に関しては、涼しい顔で一路は答える。

「お前……すげえな」
「何がだ?」

俺の、語彙力のない賛辞に対して、いかにも心当たりがないという返答を一路がしてくる。

「……夢に出てきそうな不気味なことをされても、ちゃんと仕事をしてきたわけだろ?……なかなか出来ることじゃねえだろ」
「例えどんなことがあっても、仕事は正しくこなせ」
「え?」
「そう、言われたから……そうしただけだ」
「そ……そうか……?」

そう言うもの……なのだろうか。
だとしても、一路は並大抵の精神力じゃないことだけは、俺でも分かる。
だったらやっぱり……。

「一路。後生だ。宮川に事情を聞いてきてほしい」

こいつに賭けるしか、俺たちに残された道はない。