Side実鳥

「娘は、本当にギリギリまで病気のこと私に隠していました。私が娘の病気のことを知った時にはもう……余命1年もないだろうと言う状況になっていたんです」
「え……そんなこと……ありえるんですか……?」

未成年であれば、病院に行くのに親同伴が必須だ。

「……娘は悪知恵も働くところがあるので、ご近所のおばあさんに自分の身内のフリをして一緒に病院へ行ってもらうこともしていたみたいで……」
「そ、それは……すごいですね……」

頭がいい子供、というのも……結構困ったもんなんだな……と、不謹慎ながら思ってしまった。
歩美さんが悪知恵という、印象が良くない言葉を使ったのは……きっと思い当たることがこの件だけではないんだろうな……というのは、想像に難くない。

「そんな時に救いの手を差し伸べてくれたのが、清様だったんです」
「悠木先生が……?」
「はい。娘のために清様は決まっていたはずの輝かしい財閥御曹司としての未来を捨て、医学の道へと進み……娘を治すための尽力してくださったのです」
「な……なるほど……」

そう言えば、悠木先生は、有名な財閥の一族だとも、雑誌かどこかに書いてあった。

決められた輝かしい未来を捨て、自分の力で新たな道を切り拓いた天才医師。

そんな記載があったのを覚えている。

「だから、私は決めたのです。清様が娘を救っていただくのであれば、私は娘と清様のために、残りの人生を捧げようと」

そこまで聞いて、私は頭の中にいくつか疑問が浮かび上がった。