Side実鳥

開放感がある広いリビングには、一目で質が良いと分かるインテリアが丁寧に配置されている。
人間が本当に生活しているのかと、疑ってしまう程の完璧な美しい空間は、テレビでよく見た芸能人の家のようだとすら思う。
こんなゆとりある空間で……ゆとりある心で葉を育てることができたらどんなにいいか、と思ってしまう。

おそらく牛革で作られたであろう、真っ白いソファに眠ったままの葉を横たえ、私も腰掛けてみる。
座り心地が、私のかつての家……元旦那と暮らした時に使った安物のソファとは雲泥の差だった。

ローテーブルには、人気キャラクターの形に作られた、かわいいクッキーやパンがたくさん並べられている。
葉が好きなアニメのキャラクターもあったので、葉が目覚めたらちょっと大変だろうな……と思ってしまった。

それにしても、どうしてこんな子供が喜ぶようなものがこんなにたくさんあるんだろう……。

葉以外にも、葉くらいの子供がよく来るのだろうか?
だから、もともと準備されていたのだろうか?
まさか、葉が来ることを分かっていたわけではないだろう。

そんなことを考えていた時。

「あらあら?どうかなさいましたか?」

リビングと繋がっているダイニングの方から現れたのは、エプロンを身につけた老婦人。
世の中の絵本によく描かれるような、にこにこと可愛らしいおばあさんが、具現化して現れたような姿をしていた。
老婦人は、ちらりと葉に目線をやると、ほんの少し悲しげな目をしてから、私に微笑んだ。