Side朝陽

俺は、宮川と言う声優について、スマホで調べてみることにした。

宮川のりか
高校生の時にデビューした、一路と同じ事務所の新人。
wikiによれば、デビューして最初の方で主役級の仕事をしているみたいだった。

「一路は、この宮川ってやつと共演したことはあるのか?」
「いや……」

見たところ、男がやるようなソシャゲのキャラをやることが多く、一路が出るような男女に好かれそうなアニメには出ていない様子だった。

「そしたら、お前が宮川のりかと会ったのは、その日だけか……?」
「そう言われてみれば……」
「……お前、まさか共演者のこととか覚えてないのか?」
「必要があれば覚える」

つまり、必要がなければ覚えない、ということだな。
たった数日の付き合いの俺だが、一路朔夜という人間が少しだけ見えた気がした。
こんな……他人のことになんか興味ございません、知りませんを地でいくような男が執着したのが凪波。

俺が知らない凪波は、一体どんな凪波だったんだ……?
知りたい。
けど知りたくない。
でも……知るべき。
死ぬ決意をした凪波を、俺たちの意思で起こすのであれば、取り戻すのであれば。
目を背けることは許されない。
そんな気がした。

「一路……頼みがある」

凪波が目覚めた時、もしかすると俺から本当の意味で凪波を奪うかもしれない男。
そんな男に、男として頼らざるを得ないなんて、情けなくて涙も出ない。
だけど、俺の腹は……決まった。

凪波を知る。
全てを。
そのために必要なことなら、俺は何だってできる。
利用する。

「宮川のりかに、会いに行くことはできるか?」