Side 凪波

連れてこられたのは、卒業した高校の前。

「さすがに、中には入れないか……」

まいったな……という表情をする朝陽がなんだかおかしかった。
「そんなの、私にだってわかるよ」
「いや、まあそれはそうなんだけど……でも、どうしてもあそこじゃないと……」
「あそこって?」
「……しょうがねえ、この手を使うか」

朝陽は意を決したように、門の上に上った。

「あ、朝陽!?何してんの!?」
「来い、凪波!」

朝陽が私に手を伸ばした。

「来いってどういうこと!?」
「ったく、しょうがねえな……」

そう言うと、朝陽が……いつの間にか太く、そしてたくましくなった腕で私の体を宙に浮かせた。

「きゃっ!?」
「捕まってろよ!」

そう言うと、朝陽はあっという間に私を抱えて、学校側に降り立った。

「こんなの、見つかったら警察呼ばれるよ!」
「見つからないようにすりゃあ良いんだろ」

朝陽は私を抱えたまま、走っていく。

「ちょっと!お、おろして!」
「見つかりたくないんだろ!急いで行くぞ」
「わ、わかった!わかったから!」

朝陽の厚くなった胸に体を預けて、私は朝陽を初めて「男性」であるのだと意識をした。