Side朝陽

「お前……一緒に住んでたんだよな?」
「ああ……」
「だったら、あいつの行動くらい……側にいたんだから、分かるはずだろう」
「それなら聞くが」

一路は俺を睨みつける。
美形は、怒った顔も綺麗なのが、余計にムカつく。

「君は、同居している人間の行動を……逐一把握しているのか?海原」
「……何だと?」
「君には……いるだろう?父や母と呼ばれる存在が」

その言い回しに、少々引っかかった。
呼ばれる存在。
何故、そんな遠回しなことを言ったのだろう。
普通に両親という言葉を使えば済む話ではないだろうか。
とはいえ、こんなところをほじくり返すゆとりはないので

「ああ。いるけど?」

と話を進めるためにわざとスルーした。

「同じ空間で生活している人間同士……家族だったり、恋人は……行動を把握できるものなのか?しなくてはいけないのか?するべきだったのか?」

これは、一路の癖なのだろうか?
精神的に追い詰められた時、相手を攻めるかのように捲し立てるのは。

「待て、おい。聞いてるのはこっちだ」
「すまない……」
「いやまあ……こっちこそ……わりぃ……」

客観的に見れば、俺はきっと悪くないのだろう。
俺は、頭に浮かんだ疑問を、こいつに聞いただけだ。
嫉妬の気持ちをほんの少し含めてしまった声色だったのは認めるが。
でも、ついこいつに釣られて謝ってしまった。
こいつが出す息遣い、声色がそうさせるのか?
それは意図的なのか無意識なのか分からないが、こいつのこの声が、トップ声優になれた1つの要因なのかもしれないと思ってしまった。

「僕は、確かに彼女と暮らしてはいた」
「……ああ」
「必要な時には側にいたし、夜は一緒のベッドで寝ていた」

……その説明は、やっぱりいらない。
あいつを抱いたということを、容易に想像させるから。

「でも」
「……でも?」
「彼女の時間のほとんどは……僕のものじゃなかった……気がする」

一路はそう言うと、また大きく息を吐いた。
腹に溜めていた何かを吐き出してしまうほどの、大きな息。
Side朝陽

「お前……一緒に住んでたんだよな?」
「ああ……」
「だったら、あいつの行動くらい……側にいたんだから、分かるはずだろう」
「それなら聞くが」

一路は俺を睨みつける。
美形は、怒った顔も綺麗なのが、余計にムカつく。

「君は、同居している人間の行動を……逐一把握しているのか?海原」
「……何だと?」
「君には……いるだろう?父や母と呼ばれる存在が」

その言い回しに、少々引っかかった。
呼ばれる存在。
何故、そんな遠回しなことを言ったのだろう。
普通に両親という言葉を使えば済む話ではないだろうか。
とはいえ、こんなところをほじくり返すゆとりはないので

「ああ。いるけど?」

と話を進めるためにわざとスルーした。

「同じ空間で生活している人間同士……家族だったり、恋人は……行動を把握できるものなのか?しなくてはいけないのか?するべきだったのか?」

これは、一路の癖なのだろうか?
精神的に追い詰められた時、相手を攻めるかのように捲し立てるのは。

「待て、おい。聞いてるのはこっちだ」
「すまない……」
「いやまあ……こっちこそ……わりぃ……」

客観的に見れば、俺はきっと悪くないのだろう。
俺は、頭に浮かんだ疑問を、こいつに聞いただけだ。
嫉妬の気持ちをほんの少し含めてしまった声色だったのは認めるが。
でも、ついこいつに釣られて謝ってしまった。
こいつが出す息遣い、声色がそうさせるのか?
それは意図的なのか無意識なのか分からないが、こいつのこの声が、トップ声優になれた1つの要因なのかもしれないと思ってしまった。

「僕は、確かに彼女と暮らしてはいた」
「……ああ」
「必要な時には側にいたし、夜は一緒のベッドで寝ていた」

……その説明は、やっぱりいらない。
あいつを抱いたということを、容易に想像させるから。

「でも」
「……でも?」
「彼女の時間のほとんどは……僕のものじゃなかった……気がする」

一路はそう言うと、また大きく息を吐いた。
腹に溜めていた何かを吐き出してしまうほどの、大きな息。