Side朝陽

一路朔夜を誑かした悪女を成敗するスレッド。
不穏な空気が漂うタイトルの掲示板。
藤岡に、そういう世界が存在するのだと、つい数時間前に教えてもらったばかり。
内容が内容なだけに、当事者に聞いても良いのか、一瞬だけ悩んだ。
悩んだ……けれども。
時間も、方法も限られているからこそ……ここで躊躇っている場合では、きっとないのかもしれない。

「1つ、聞きたいことがある」
「……なんだ……」

先ほどよりは、ほんの少しだけ冷静になったのだろう。
一路の声は落ち着いていた。

「お前と凪波が付き合ってるのって……ファンにバレたことってあるのか?」

一路は首を傾げながら

「そんなこと、今関係ないだろ」
「いや、大ありかもしれねえんだ」

俺は、藤岡に予め転送しておいてもらったURLをクリックし、例のサイトを出してから、一路に画面を見せた。

「これを見てみろ」

一路は、タイトルの文字を見た瞬間に顔を上げて俺の目を見た。
……こいつが、俺の目をちゃんと見たのは、俺の家で話した以来。

「こんなものが……」
「文字通り、お前のファンが……お前の彼女を吊し上げる場所だな」

絶句している一路に対し、俺は改めて尋ねる。

「これ、お前は知っていたのか?」
「いや……ここまでのは……」

ここまで、という言葉が俺の中で引っかかる。

「ということは、別の形では、知ってるということだな」
「……ああ……SNSで少し……噂は流れたが……」
「その時はどうした」
「凪波が……自分で対処した」
「どういうことだ?」
「凪波が……僕のマネージャーだったことは……君の家で話をしたな」

俺は、黙って頷く。
声を出すと、燻っている、今出してはいけない感情が出そうだったから。

「彼女の仕事の1つが……僕に関する悪い噂の火消しだった」
「その時、お前らは……その……」

あまり、口にはしたくない。
俺以外の男のものだった、と言う事実は。
なので、つい口籠ってしまったが

「ああ……恋人だった」

胸にドスっとナイフが刺さったかのような痛みが走った。
でも、俺はその痛みをぐっと堪えた。
聞きたいこと、知りたいことがその先にあるから。

「……つまり……凪波は……自分でそういう投稿を見ていたということか?」
「……かもしれない」
「かもしれない、だと?」

一路の、まるで他人事のような言い回しに、俺は少しイライラし始めていた。Side朝陽

一路朔夜を誑かした悪女を成敗するスレッド。
不穏な空気が漂うタイトルの掲示板。
藤岡に、そういう世界が存在するのだと、つい数時間前に教えてもらったばかり。
内容が内容なだけに、当事者に聞いても良いのか、一瞬だけ悩んだ。
悩んだ……けれども。
時間も、方法も限られているからこそ……ここで躊躇っている場合では、きっとないのかもしれない。

「1つ、聞きたいことがある」
「……なんだ……」

先ほどよりは、ほんの少しだけ冷静になったのだろう。
一路の声は落ち着いていた。

「お前と凪波が付き合ってるのって……ファンにバレたことってあるのか?」

一路は首を傾げながら

「そんなこと、今関係ないだろ」
「いや、大ありかもしれねえんだ」

俺は、藤岡に予め転送しておいてもらったURLをクリックし、例のサイトを出してから、一路に画面を見せた。

「これを見てみろ」

一路は、タイトルの文字を見た瞬間に顔を上げて俺の目を見た。
……こいつが、俺の目をちゃんと見たのは、俺の家で話した以来。

「こんなものが……」
「文字通り、お前のファンが……お前の彼女を吊し上げる場所だな」

絶句している一路に対し、俺は改めて尋ねる。

「これ、お前は知っていたのか?」
「いや……ここまでのは……」

ここまで、という言葉が俺の中で引っかかる。

「ということは、別の形では、知ってるということだな」
「……ああ……SNSで少し……噂は流れたが……」
「その時はどうした」
「凪波が……自分で対処した」
「どういうことだ?」
「凪波が……僕のマネージャーだったことは……君の家で話をしたな」

俺は、黙って頷く。
声を出すと、燻っている、今出してはいけない感情が出そうだったから。

「彼女の仕事の1つが……僕に関する悪い噂の火消しだった」
「その時、お前らは……その……」

あまり、口にはしたくない。
俺以外の男のものだった、と言う事実は。
なので、つい口籠ってしまったが

「ああ……恋人だった」

胸にドスっとナイフが刺さったかのような痛みが走った。
でも、俺はその痛みをぐっと堪えた。
聞きたいこと、知りたいことがその先にあるから。

「……つまり……凪波は……自分でそういう投稿を見ていたということか?」
「……かもしれない」
「かもしれない、だと?」

一路の、まるで他人事のような言い回しに、俺は少しイライラし始めていた。