Side悠木

「それに……そうだな……。

こんな人間は、どうだろう。

彼にとって、愛は与えるものじゃない。

押し付けられるもの、そして引き換えに奪われるもの。

高額な金銭に、高価なプレゼントを与えられ、その代わりに失ったのは、彼の尊厳。

そうして消費し続けられた彼に、初めて特別と呼べる存在ができた。

特別だと彼が思いたいその少女は、彼が欲しいと思ったものを与える事が唯一できた。

男が持つ狩猟本能として、追いかけたい、捕まえたい……と思う時は、少女は彼にそれをすることを許す。

人が、誰しも生まれ持つ、甘えたいという母親への欲求を持つ時は、少女は彼に、甘えることを許す。

犯したい、愛したいという時もそうだ。

少女は彼を、受け入れていた訳ではない。

許すだけだった。

許す……というのはどんな気持ちか、君たちは分かるか?

どう言う時に使う言葉か、分かるか?

……無意識なのか、意識的なのかはこの際置いておくが……。

許すということはすなわち。

被害者と加害者の関係にある状態の時に使う言葉だ。

彼は、自分が与えているものを愛だと信じ切っていた。

少女は、彼から与えられるもの全てに対し、被害だと思っていたことに気づかず。

そして少女は、彼の愛に追い詰められ、貶められ、少女の心は蝕まれた。

そのことに、彼はやはり、最後の最後まで気づかない。

気づかないまま、今もなお、思っている。

自分という人間は、誰よりも少女を愛している……とね。

……さあ、どうかね。

こんな人間は、愚かではないと、残酷ではないと……言えるかね?」