Side悠木

「例えば、こんな人間について、君たちはどう思うだろうか?

彼は、幼い頃からずっと近くにいた幼馴染の少女に恋をしていた。

無邪気な、可憐な笑顔が自分というちっぽけな人間を頼ってくれるという優越感に浸ることが、彼にとっては何よりも快感だった。

だがしかし。

少女があまりにも近くに居すぎたために、何も言わずに自分の側にいてくれるだろうと、彼は勘違いをしていた。

だから、彼は、少女が日々、本当は何を考えていたか、苦しんでいたのかには無頓着。

少女の気持ちの変化に気づかず、自分がこうすべきと考えるものだけを、与え続けた。

彼の正しさは、少女にとってはそうではない、ということを知らずに。

年齢を重ねれば、人は変わるものだ。

好みや価値観など、様々なものが。

しかし、彼はそれを見誤った。

少女の変化は、意識さえしていればすぐに分かったはずだった。

それほどまで、少女は追い詰められていた。

彼は、決して気づかない。

自分が追い詰めたという、現実に。

そうしてその現実に気付かぬまま、夢でも見るかのように、かつての少女に想いを寄せる。

少女がどんなに変わっても、変わったという現実を見ることなく。

……そんな彼のような存在を、君たちはどう思うかね?」