Side悠木

「君たちに、今から1日だけ、時間をあげよう。

凪波さんのことは忘れてしまい、彼女なしの幸せを生きるのか。

彼女が望んだように。

それとも、凪波さんの肉体の命を無理やりつなぎ止めるのか。

君たちが考える、君たちだけの幸せを掴むために。

私はね……この実験をしてしまったことを、今、とても後悔をしている。

もし、彼女をあのまま海の中で眠らせておけば、きっと君たちは、余計な期待をしなくて済んだだろう。

喜びも、苦しみも、期待も、悲しみも……君たちにとって余計な、これから得るべきでなかった、彼女との思い出を増やさせてしまうことも無かったのだから。

心から、謝罪しよう。

無駄な期待をさせてしまったこと、心から詫びる。

……決めつけるな、と言いたげな表情だな。

残念だが、私には分かる。

君たちは、今ここで凪波さんを手放さないと、ますます不幸になる、ということを。

……まだ、選択のための覚悟が、足りないようだな。

では、本当にこれが最後だ。

君たちに……例え話をしてあげよう。

そして、ぜひとも考えてみたまえ。

この世で最も残酷な選択は……残酷な者は、いったいどういう人間なのか、ということを」