Side悠木

「それから、また無言の時間が続いた。

水も、すでに無くなっていたし、彼女は空ばかり見ていたからね。

もう、今日は話す気はないのだろう。

私はそう思ったからね。

部屋を出ようとしたんだ。

すると、突然こんなことを言った。

私のことなんか、どうでもいいと思っていると思います、と。

吐き捨てるような、小さな声だった。

でもその声の節々から、憎しみのようなものを、私は感じたよ。

それからもう1つ……。

これ以上、踏み込んでくれるな。

そんな、強い拒絶の意思が彼女の全身から滲み出ていた。

だから私は、この話題にはもう触れることは、やめた。

だがね。

……その理由は……海原君……。

君と、彼女のご両親に会って、ようやくしっくりきた。

……さほど驚いた顔をしてはいないね、海原君。

そして、実鳥さんも……。

なるほど。

やはり、君達はは……知っていたのだろうね。

畑野凪波という人間の中に染み込んでいる、毒を。

その毒はきっと、本人の意思に関係なく、生まれながらに摂取し続けられた……呪いにも等しいのだろう」