Side悠木

「凪波さんは、二つ返事で了承した。

あまりにも、返事までの時間が、私が想定していたよりもずっと早かったからね。

本当に考えたのかね?

私が提案したにも関わらず、何度も繰り返し聞いてしまったよ。

そうだろう?

普通なら、成功しても失敗しても、今この時のままではいられないと、私は言ったんだ。

もし、君たちなら……どう思う……?

少しは、考えるんじゃないか?

例えばそうだな……君たちが毎日顔を合わせる人物のこととか……をね。

凪波さんには、考えた気配すらなかった。

だから、ついね……おせっかいにも言ってしまったんだ。

君の決断を、例えば家族が聞いたらどう思うのか、一瞬でも考えてみたのか……とね。

すると、凪波さん……は遠くを見るような目をしながら、こう言ったんだ

家族って……何ですか?

とね」