Side悠木

「凪波さんは、余程追い詰められていたんだろうね。

少し丸めれば紐になりそうなものを見つけるたびに、彼女は首を釣ろうとしていたよ。

もちろん、彼女の部屋には監視カメラを設置していたからね、すぐに阻止することはできた。

ただ、それを何度も繰り返すと、脳にもダメージが蓄積する。

私にとって、脳は無限の可能性を秘めている、素晴らしい宝なんだよ。

どんな者の脳であっても、みすみす私の目の前で脳が傷ついていくのは、耐えられなかった。

その時、ふと……私は今進めている自分の研究のことを思い出した。

実鳥さん。あなたが読んだWEB記事の内容とは、似ているが、少し違う研究のことだ。

そして、その研究は、まだ世に出ていない。

この施設にいる人間しか……知らない。

私は……彼女に聞いてみた。

もしも、時を戻せるならいつに戻りたいか?と。

彼女は、少し考えてから……教えてくれた。

高校の卒業式の日だと。

私は、彼女に1つ賭けをしないか、と持ちかけたんだ。

もしも、私が凪波さんが望む時まで、凪波さんを戻すことができたら、凪波さんは生きたまま生まれ変わることができる。

ただ、もし失敗すれば、2度と今の時には戻れない、とね……」