Side悠木

「私はすぐに山田に連絡を取り、彼女を探すように手配したよ。

ああ……海原君と実鳥さんは会っただろう?

君達をここに連れてきた男が、山田だ。

私が子供の頃から長い間、私の執事をしてくれているんだよ。

彼の年齢については、聞かないでくれよ。

私も、本当の年齢は知らないんだ。

誰にだって、知られたくない秘密の1つや2つはあるものだ。

そういうものは、触れずにそっと、見ないふりをするのが、大人の礼儀というものだ。

そうだろう?

……いけないね。

話がまた逸れてしまった。

山田に、彼女の救出を命令したら、あっという間に彼女を海の中から探し出すことができた。

どうやったかは……企業秘密だ。

ただ、警察に届ける前に事を済ます必要が色々あるからね。

それなりの準備は、私達は常にしているんだ。

……警察に届けると、何かと大変になるだろう?

もしかすると、彼女にとって不都合な事も、警察という大きな組織を巻き込むことによって発生してしまうかもしれない。

そんなリスクを、知らず知らずのうちに負わせるわけにはいかない。

そう。

ここは、そういうことを全て織り込み済みで創った場所なんだと、思ってくれていい……。

さて。

話を戻そう。

すぐに発見できたおかげで、凪波さんの命に別条は全くなかった。

だが……しばらく眠り続けていた。

そう、今と同じように。

いつ、目覚めるか分からない、深い深い眠り。

何がそうさせたのかは、この母子手帳から想像するしかできなかった。

最初に何て書いてあったと思う?

本来なら、喜びに満ち溢れるべき、命の宿りに対して。

彼女が書いたのは、呪いの言葉だった。

自分に対する……ね」