Side朝陽
「悠木先生……」
「何だね?」
「何ですか……これ……」
「これ、とは?」
わざと俺が言葉にしたくないことを、言わせようとしているのか?
「……こいつ……何でこんな血だらけなんだ……」
「本人に、聞けば良いじゃないか。彼は、声は届くはずだ」
悠木先生は
「しょうがないな……」
と言うと、一路朔夜の首根っこを掴み、体を持ち上げながら
「目が覚めているだろう?答えてあげたまえ」
と、一路朔夜の耳元で囁いた。
一路朔夜は、目線をこちらに向けないまま、うめき声をあげるだけ。
「困るね……そろそろ、君にもちゃんと目を覚ましてもらわないとね……」
そう言うと、懐から注射器を取り出した悠木先生は、一路朔夜の腕にそのまま刺した。
「あああああ……!!」
「先生!何してんだ!!!」
俺は、一路朔夜を悠木先生から無理やり引き剥がした。
その反動で、2人で床に転がってしまう。
一路朔夜は頭をぶつけたようで、ひどく痛がっている。
「おや?君は……彼のことが憎いはずじゃないのか?彼が、どうにかなった方が良いと思ったんじゃないか?」
先生が俺に言い放った言葉に、対し、返す言葉に迷う。
本当なら、1番憎いはずの人間。
俺から凪波を奪おうとしたはずの人間。
だけど……。
「俺は誰であろうと、目の前にいる人間が苦しんでいるのを見過ごせるほどの、度胸はないです」
これが俺の、精一杯。
悠木先生は
「そうか……」
と一瞬だけ、優しい笑いを浮かべた。
しかし、悠木先生はすぐに俺の胸ぐらを掴み
「違うだろう?」
「っ……!!」
「君が聞きたいのは、そんな話じゃないだろう?」
悠木先生は、そのまま俺の頭を、ガラスの向こう側に向けた。
見たくなくて、あえて目線を逸らした、気持ちが悪い現実。
「君は、わざわざ東京まで取り戻しにきたはずだった、愛する女の現実に、目を背けるような人間なのか?」
「悠木先生……」
「何だね?」
「何ですか……これ……」
「これ、とは?」
わざと俺が言葉にしたくないことを、言わせようとしているのか?
「……こいつ……何でこんな血だらけなんだ……」
「本人に、聞けば良いじゃないか。彼は、声は届くはずだ」
悠木先生は
「しょうがないな……」
と言うと、一路朔夜の首根っこを掴み、体を持ち上げながら
「目が覚めているだろう?答えてあげたまえ」
と、一路朔夜の耳元で囁いた。
一路朔夜は、目線をこちらに向けないまま、うめき声をあげるだけ。
「困るね……そろそろ、君にもちゃんと目を覚ましてもらわないとね……」
そう言うと、懐から注射器を取り出した悠木先生は、一路朔夜の腕にそのまま刺した。
「あああああ……!!」
「先生!何してんだ!!!」
俺は、一路朔夜を悠木先生から無理やり引き剥がした。
その反動で、2人で床に転がってしまう。
一路朔夜は頭をぶつけたようで、ひどく痛がっている。
「おや?君は……彼のことが憎いはずじゃないのか?彼が、どうにかなった方が良いと思ったんじゃないか?」
先生が俺に言い放った言葉に、対し、返す言葉に迷う。
本当なら、1番憎いはずの人間。
俺から凪波を奪おうとしたはずの人間。
だけど……。
「俺は誰であろうと、目の前にいる人間が苦しんでいるのを見過ごせるほどの、度胸はないです」
これが俺の、精一杯。
悠木先生は
「そうか……」
と一瞬だけ、優しい笑いを浮かべた。
しかし、悠木先生はすぐに俺の胸ぐらを掴み
「違うだろう?」
「っ……!!」
「君が聞きたいのは、そんな話じゃないだろう?」
悠木先生は、そのまま俺の頭を、ガラスの向こう側に向けた。
見たくなくて、あえて目線を逸らした、気持ちが悪い現実。
「君は、わざわざ東京まで取り戻しにきたはずだった、愛する女の現実に、目を背けるような人間なのか?」