Side朝陽

藤岡が見せてくれたスマホ画面。
そこには、悠木先生と外国人の人が握手をして、微笑んでいる写真が表示されていた。

「これ……何なんだ?」
「アメリカのWEBニュース。1年くらい前のなんだけど……」
「お前、こんなのも読むんだな……」

藤岡の調査力の凄さは身に染みて分かっていたが、ジャンルの幅広さには脱帽する。
俺の言葉に、藤岡は少し困ったような表情になった。
しかし、それはすぐに戻ったので、気のせいか……と思うことにした。

「で、この記事なんだけど……この外国人の人、自殺志願者だったのよ」
「でもそんな風には見えないな」
「記事によると……自殺の原因に関わる記憶を全て封印する手術をしたことで、みるみる内に元気になったって書いてあるの」
「は!?記憶の操作!?」

そんなことが、本当にできると言うのか……。

「私もこの記事を読んだだけでは、信じられなかったけれど……。でも、その手術をしたっていうのが……」

悠木先生だ……ということらしい。
写真と一緒に、先生の輝かしい経歴も記載されている。
……そんな話、聞いたことなかった。一度も。
俺にとっては、いつも親身に話を聞いてくれる、優しい兄のような、父のような人……だった。

「なあ、これって……」
「失礼します」

俺が続きを話そうとした時、車の扉が開き、山田さんが顔を覗かせた。

「おもてなしの準備が整いました、どうぞお車から降りてくださいませ」

おもてなしって……なんだ。
また何かが起こるのか?
藤岡は急いでスマホを隠し、寝ぼけ眼の葉を抱きかかえた。