Side朝陽
「何だ、これは……」
誰が想像出来ただろうか。
都会のホテルの真下に、SF映画のような世界が広がっているなんて。
教会の床という、とてつもなく大きなエレベーターによって連れてこられたのは、小さな蛍光灯が怪しく光る地下トンネルだった。
都会の地下鉄の様子は、テレビで見たことがあった。
それとは、印象は違った。
どちらかと言えば、ここにくるまでに使った高速道路の地下部分の方が、イメージはずっと近い。
地面は真っ直ぐに舗装されており、話し声は反響して返ってくる。
側面に張り巡らされた管が青白く光、それは灯りの代わりになっている。
でも、俺達を驚かしたのは、それだけではなかった。
山田さんは、葉を地面に下ろした。
すると、葉は興奮した様子で、それに向かって走る。
藤岡は、葉がそれに触ることを恐れ
「こら葉!」
と、急いで葉を捕まえた。
「やだー!!ぶーぶー!!ぶーぶー」
葉の興味を一瞬にして引きつけたもの。
それは、テレビや映画の中は勿論、ウエディング雑誌の中でしかお目にかかったことがない……細長く、見た者を圧倒させる真っ白なリムジン車。
「どうして、こんな所にリムジンが……」
「これから、清様の元にお連れします、どうぞお入りください」
いきなり、地下に連れられて、車まで用意されている。
映画のような展開であれば、こういうのは罠である、と相場は決まっている。
「ちょっと待ってください」
俺は、藤岡と葉の前に立つ。
もし何か、映画のような展開が本当に起きるのであれば、二人をどこかに逃がせるように……。
……どこへ、逃がせる?
俺は、背後をちらと見る。
道は、延びておらず、エレベーターになっていた床がゆっくりと上っているのが見えるだけ。
……くそっ……詰んだか……!?
いや、ここにいるのは若く見えても年はだいぶ上。
いざとなったら力技で……。
「どうしました?海原様」
山田さんの声が、トンネル中に響く。
「本当に……一路昨夜と……悠木先生のところに連れてってくれるんですか?」
「はい」
「証拠は?」
そう。証拠だ。
この車に、俺たちが乗って本当に安全か。
本当にこの人物が、目的地に連れて行ってくれるのか。
ここまで来て考えるべきことではないが、証拠をまだ、提示されていない。
「証拠……ですか」
「はい。それがない限り、俺はこの二人と一緒に車に乗るわけには行きません」
「そうですか……困りましたね……」
「では、証拠が出せない、ということですか」
「いえ、さっきから連絡がつかないのですよ」
「……誰と……?」
俺の問いに、山田さんは答えない。
となれば、答えは1つ。
「俺たちを、地上に戻してください」
安全を、取るしかない。
今は。
次の打手の当てがなかったとしても。
……でも、もしこの二人がいなかったとしたら、俺はきっと即答をできたかもしれない。
とても、今、もどかしい。
だけど……。
「さあ、どうしますか、山田さん。証拠を出しますか、出しませんか?」
「安心してくれたまえ、海原くん」
その声は突如、空間から聞こえてきた。
「……悠木……先生?」
その声こそ、まさに俺たちが今頼りにしたかった人の声。
しかし、話し方は、まるで別人。Side朝陽
「何だ、これは……」
誰が想像出来ただろうか。
都会のホテルの真下に、SF映画のような世界が広がっているなんて。
教会の床という、とてつもなく大きなエレベーターによって連れてこられたのは、小さな蛍光灯が怪しく光る地下トンネルだった。
都会の地下鉄の様子は、テレビで見たことがあった。
それとは、印象は違った。
どちらかと言えば、ここにくるまでに使った高速道路の地下部分の方が、イメージはずっと近い。
地面は真っ直ぐに舗装されており、話し声は反響して返ってくる。
側面に張り巡らされた管が青白く光、それは灯りの代わりになっている。
でも、俺達を驚かしたのは、それだけではなかった。
山田さんは、葉を地面に下ろした。
すると、葉は興奮した様子で、それに向かって走る。
藤岡は、葉がそれに触ることを恐れ
「こら葉!」
と、急いで葉を捕まえた。
「やだー!!ぶーぶー!!ぶーぶー」
葉の興味を一瞬にして引きつけたもの。
それは、テレビや映画の中は勿論、ウエディング雑誌の中でしかお目にかかったことがない……細長く、見た者を圧倒させる真っ白なリムジン車。
「どうして、こんな所にリムジンが……」
「これから、清様の元にお連れします、どうぞお入りください」
いきなり、地下に連れられて、車まで用意されている。
映画のような展開であれば、こういうのは罠である、と相場は決まっている。
「ちょっと待ってください」
俺は、藤岡と葉の前に立つ。
もし何か、映画のような展開が本当に起きるのであれば、二人をどこかに逃がせるように……。
……どこへ、逃がせる?
俺は、背後をちらと見る。
道は、延びておらず、エレベーターになっていた床がゆっくりと上っているのが見えるだけ。
……くそっ……詰んだか……!?
いや、ここにいるのは若く見えても年はだいぶ上。
いざとなったら力技で……。
「どうしました?海原様」
山田さんの声が、トンネル中に響く。
「本当に……一路昨夜と……悠木先生のところに連れてってくれるんですか?」
「はい」
「証拠は?」
そう。証拠だ。
この車に、俺たちが乗って本当に安全か。
本当にこの人物が、目的地に連れて行ってくれるのか。
ここまで来て考えるべきことではないが、証拠をまだ、提示されていない。
「証拠……ですか」
「はい。それがない限り、俺はこの二人と一緒に車に乗るわけには行きません」
「そうですか……困りましたね……」
「では、証拠が出せない、ということですか」
「いえ、さっきから連絡がつかないのですよ」
「……誰と……?」
俺の問いに、山田さんは答えない。
となれば、答えは1つ。
「俺たちを、地上に戻してください」
安全を、取るしかない。
今は。
次の打手の当てがなかったとしても。
……でも、もしこの二人がいなかったとしたら、俺はきっと即答をできたかもしれない。
とても、今、もどかしい。
だけど……。
「さあ、どうしますか、山田さん。証拠を出しますか、出しませんか?」
「安心してくれたまえ、海原くん」
その声は突如、空間から聞こえてきた。
「……悠木……先生?」
その声こそ、まさに俺たちが今頼りにしたかった人の声。
しかし、話し方は、まるで別人。
「何だ、これは……」
誰が想像出来ただろうか。
都会のホテルの真下に、SF映画のような世界が広がっているなんて。
教会の床という、とてつもなく大きなエレベーターによって連れてこられたのは、小さな蛍光灯が怪しく光る地下トンネルだった。
都会の地下鉄の様子は、テレビで見たことがあった。
それとは、印象は違った。
どちらかと言えば、ここにくるまでに使った高速道路の地下部分の方が、イメージはずっと近い。
地面は真っ直ぐに舗装されており、話し声は反響して返ってくる。
側面に張り巡らされた管が青白く光、それは灯りの代わりになっている。
でも、俺達を驚かしたのは、それだけではなかった。
山田さんは、葉を地面に下ろした。
すると、葉は興奮した様子で、それに向かって走る。
藤岡は、葉がそれに触ることを恐れ
「こら葉!」
と、急いで葉を捕まえた。
「やだー!!ぶーぶー!!ぶーぶー」
葉の興味を一瞬にして引きつけたもの。
それは、テレビや映画の中は勿論、ウエディング雑誌の中でしかお目にかかったことがない……細長く、見た者を圧倒させる真っ白なリムジン車。
「どうして、こんな所にリムジンが……」
「これから、清様の元にお連れします、どうぞお入りください」
いきなり、地下に連れられて、車まで用意されている。
映画のような展開であれば、こういうのは罠である、と相場は決まっている。
「ちょっと待ってください」
俺は、藤岡と葉の前に立つ。
もし何か、映画のような展開が本当に起きるのであれば、二人をどこかに逃がせるように……。
……どこへ、逃がせる?
俺は、背後をちらと見る。
道は、延びておらず、エレベーターになっていた床がゆっくりと上っているのが見えるだけ。
……くそっ……詰んだか……!?
いや、ここにいるのは若く見えても年はだいぶ上。
いざとなったら力技で……。
「どうしました?海原様」
山田さんの声が、トンネル中に響く。
「本当に……一路昨夜と……悠木先生のところに連れてってくれるんですか?」
「はい」
「証拠は?」
そう。証拠だ。
この車に、俺たちが乗って本当に安全か。
本当にこの人物が、目的地に連れて行ってくれるのか。
ここまで来て考えるべきことではないが、証拠をまだ、提示されていない。
「証拠……ですか」
「はい。それがない限り、俺はこの二人と一緒に車に乗るわけには行きません」
「そうですか……困りましたね……」
「では、証拠が出せない、ということですか」
「いえ、さっきから連絡がつかないのですよ」
「……誰と……?」
俺の問いに、山田さんは答えない。
となれば、答えは1つ。
「俺たちを、地上に戻してください」
安全を、取るしかない。
今は。
次の打手の当てがなかったとしても。
……でも、もしこの二人がいなかったとしたら、俺はきっと即答をできたかもしれない。
とても、今、もどかしい。
だけど……。
「さあ、どうしますか、山田さん。証拠を出しますか、出しませんか?」
「安心してくれたまえ、海原くん」
その声は突如、空間から聞こえてきた。
「……悠木……先生?」
その声こそ、まさに俺たちが今頼りにしたかった人の声。
しかし、話し方は、まるで別人。Side朝陽
「何だ、これは……」
誰が想像出来ただろうか。
都会のホテルの真下に、SF映画のような世界が広がっているなんて。
教会の床という、とてつもなく大きなエレベーターによって連れてこられたのは、小さな蛍光灯が怪しく光る地下トンネルだった。
都会の地下鉄の様子は、テレビで見たことがあった。
それとは、印象は違った。
どちらかと言えば、ここにくるまでに使った高速道路の地下部分の方が、イメージはずっと近い。
地面は真っ直ぐに舗装されており、話し声は反響して返ってくる。
側面に張り巡らされた管が青白く光、それは灯りの代わりになっている。
でも、俺達を驚かしたのは、それだけではなかった。
山田さんは、葉を地面に下ろした。
すると、葉は興奮した様子で、それに向かって走る。
藤岡は、葉がそれに触ることを恐れ
「こら葉!」
と、急いで葉を捕まえた。
「やだー!!ぶーぶー!!ぶーぶー」
葉の興味を一瞬にして引きつけたもの。
それは、テレビや映画の中は勿論、ウエディング雑誌の中でしかお目にかかったことがない……細長く、見た者を圧倒させる真っ白なリムジン車。
「どうして、こんな所にリムジンが……」
「これから、清様の元にお連れします、どうぞお入りください」
いきなり、地下に連れられて、車まで用意されている。
映画のような展開であれば、こういうのは罠である、と相場は決まっている。
「ちょっと待ってください」
俺は、藤岡と葉の前に立つ。
もし何か、映画のような展開が本当に起きるのであれば、二人をどこかに逃がせるように……。
……どこへ、逃がせる?
俺は、背後をちらと見る。
道は、延びておらず、エレベーターになっていた床がゆっくりと上っているのが見えるだけ。
……くそっ……詰んだか……!?
いや、ここにいるのは若く見えても年はだいぶ上。
いざとなったら力技で……。
「どうしました?海原様」
山田さんの声が、トンネル中に響く。
「本当に……一路昨夜と……悠木先生のところに連れてってくれるんですか?」
「はい」
「証拠は?」
そう。証拠だ。
この車に、俺たちが乗って本当に安全か。
本当にこの人物が、目的地に連れて行ってくれるのか。
ここまで来て考えるべきことではないが、証拠をまだ、提示されていない。
「証拠……ですか」
「はい。それがない限り、俺はこの二人と一緒に車に乗るわけには行きません」
「そうですか……困りましたね……」
「では、証拠が出せない、ということですか」
「いえ、さっきから連絡がつかないのですよ」
「……誰と……?」
俺の問いに、山田さんは答えない。
となれば、答えは1つ。
「俺たちを、地上に戻してください」
安全を、取るしかない。
今は。
次の打手の当てがなかったとしても。
……でも、もしこの二人がいなかったとしたら、俺はきっと即答をできたかもしれない。
とても、今、もどかしい。
だけど……。
「さあ、どうしますか、山田さん。証拠を出しますか、出しませんか?」
「安心してくれたまえ、海原くん」
その声は突如、空間から聞こえてきた。
「……悠木……先生?」
その声こそ、まさに俺たちが今頼りにしたかった人の声。
しかし、話し方は、まるで別人。