Side朔夜

一体、何が起きた……!?

凪波を見ると、彼女の周りに置かれている機械のモニターにDangerの文字が表示されている。

「凪波!凪波!?どうした凪波!!」

僕はガラス窓を叩きながら、凪波に向かって必死に語りかける。
向こう側にそもそも、自分の声が届いているのか……ということを気にしている余裕はなかった。
その時、向こう側の部屋の扉から、悠木が現れた。
手術着のような服に、着替えていた。
マスクと帽子で、ほとんど顔は見えない状態。

「何をして……」

悠木は全ての機械の画面を確認してから、その部屋の中で最も大きい機械の操作をし始めた。

「おい!何をしている!!!凪波はどうなってる!!?」

僕はもう1度、ガラス窓を叩きながら叫んだ。
すると、じじじ……というノイズ音が聞こえてきた。

「悪いが、少し静かにしていてくれないか」

悠木の……スピーカー越しだと明らかに分かる声が、不気味に響いてくる。

「彼女を、君が殺したいなら、話は別だがな」

悠木はそう言うと、また処置に戻る。
まだDangerの文字は、消えない。

僕が……凪波を殺す?
そんな事、どうして思うんだ……!
くそっ!!!

「清様」
スピーカー越しに、女性の声がした。
見ると、もう一人悠木と同じような服を着た人間が入ってきた。
この人も、悠木と同じように、帽子にマスクで全身を覆っているため、容姿は目以外は分からない。

「何だ」
「山田から、先ほど報告を受けました。ターゲットは無事に確保した、と」
「そうか。丁重におもてなししろ、とだけ伝えろ」
「かしこまりました」

山田?
ターゲット?
丁重に、おもてなし?
まだ他に何かあるのか?

僕がそんな事を考えていると

「一路くん」

悠木が話しかけてきた。
女性は、いつの間にか消えていた。
僕と悠木は、ガラス越しに目が合った。
悠木の表情は、マスクによって隠されているので全く読めない。
それが一層、不気味さを増幅させる。

「間も無くタイムリミットになるらしい」

タイムリミット……?

「それまでは、考えておいてくれ。彼女を大人しく見ながら、な」

そう言うと、悠木は凪波に繋がれている機械を操作する。
凪波の体は、大きく痙攣し始めた。