Side朔夜

「何故、狂ったように、君は畑野凪波をそこまで求めるのか」

目の前にいる人は僕に問う。

「僕は……狂っていない」

僕は……そう答えるしかできない。

「そうか」

悠木という男は、感情が見えない声でそれだけ言うと、急に外に出て行ってしまった。

僕は、ガラス越しに凪波と2人、取り残されてしまう。

何故、凪波を求める?
そんなのは、何度も何度も考えた。
凪波が消えてから……彼女を諦めた方がいいのかと思ってから……繰り返し考えては、迷路に迷いこんだ。

最初は興味。
次は尊敬。
それから……。

言葉にすると、なんてちっぽけなのか。
そんな漢字2文字なんかでは言い表せないほど、様々な気持ちが、複雑に絡み合っている。

それは、狂っていることなのか?
凪波に、聞けばよかった。
しばらく、機械音だけが響く中で、僕は考えて考えて、そしてまた考えた。

でも、答えが見つからない。分からない。
……その時だった。

ぴーぴーぴー!!

けたたましく警告音が鳴り、部屋中を赤いランプが点灯し始めた。