Side朝陽
藤岡の口から出てきたのは、予想したこともない衝撃的な内容だった。
「どう思う……?」
と、藤岡に聞かれても
「どう思うと言われても……」
としか、答えられない。
それくらい、俺が見てきた世界とは、かけ離れていた。
気になったとしたら……。
「写真……載ってるんだろ?今俺見れねえけど」
ゆっくりとはいえ、進みはしているので、運転中によそ見をするのはできない。
「次の信号待ちの時、見る?」
「……いや、運転落ち着いたら、見させてもらう」
「……わかった」
本当は、信号待ちの時間にさっと見るくらいはできる。
免許を取ってから約10年経つのだから、それくらいは可能だ。
でも……。
「なあ、藤岡」
「ん?」
「藤岡はさ……その……晒されてるっていう写真……凪波だと思うか……?」
「んー……画質が荒くてよく分からないけれど……多分すごい加工されてる」
「加工?」
「目をすごく大きくしたり、鼻を高くしたり……あとこの写真、胸上まであるんだけど、その胸も不自然に大きい。下手な加工してるなって思う」
「何でそこまでするんだ?」
「分からないけど……自分のことをめちゃくちゃ良く見せたい……インスタグラマーとか写真を使うインフルエンサータイプには多いと思うけど、でもこの場合は……」
そういうと、藤岡が何かを検索し始めた。
「どうした?」
「あー……この写真、風俗の話題の時にアップされてた写真なんだけど……」
「ああ……」
「風俗とか、キャバクラの女性って、仕事用のプロフィールで写真が必要らしいんだけど……家族バレや友達バレを防ぐために、ガッツリ加工する傾向があるらしい」
「……りんごの写真をよく見せるときに、色の発色をよく見せるっていうやつと同じか?」
「んーそれは目的が違うような気もするけど!別にりんごをみかんに見せるような加工をするわけじゃないんだから」
「確かに」
「この写真は、本当にそのレベルでの加工な気がする。化粧も濃いし……」
「じゃあ、その写真だけで凪波だと判断するのは……」
「凪波の親友を名乗っていていうのもアレだけど、私にはできない」
「………じゃあ……俺も……」
分からないかもな……。
「あ、海原海原」
藤岡が身を乗り出してくる。
「おい、危ねえだろ」
「あそこ!あの建物が目的地じゃない?」
「え?」
藤岡に言われて気づいた。
さっき検索したときにネットで見た外観。
この街のランドマークとも言えるほど大きい。
あそこの上からここを見下ろしたら、俺らなんかちっぽけな存在のように思ってしまうんだろうな、と感じる。
「駐車場探すぞ、手伝え」
「ガッテン承知」
俺は、藤岡にいつものように指示を出したつもりになっていた。
でも、声がうわずったし何より、自分の心臓が痛いほど鳴り響いたし、血が湧き上がるように興奮すらしていた。
これに近しい感覚は知っている。
凪波が見つかった、という連絡を受けた時。
そして凪波にプロポーズをしようと決意して、彼女を迎えに行った時と、同じ。
藤岡の口から出てきたのは、予想したこともない衝撃的な内容だった。
「どう思う……?」
と、藤岡に聞かれても
「どう思うと言われても……」
としか、答えられない。
それくらい、俺が見てきた世界とは、かけ離れていた。
気になったとしたら……。
「写真……載ってるんだろ?今俺見れねえけど」
ゆっくりとはいえ、進みはしているので、運転中によそ見をするのはできない。
「次の信号待ちの時、見る?」
「……いや、運転落ち着いたら、見させてもらう」
「……わかった」
本当は、信号待ちの時間にさっと見るくらいはできる。
免許を取ってから約10年経つのだから、それくらいは可能だ。
でも……。
「なあ、藤岡」
「ん?」
「藤岡はさ……その……晒されてるっていう写真……凪波だと思うか……?」
「んー……画質が荒くてよく分からないけれど……多分すごい加工されてる」
「加工?」
「目をすごく大きくしたり、鼻を高くしたり……あとこの写真、胸上まであるんだけど、その胸も不自然に大きい。下手な加工してるなって思う」
「何でそこまでするんだ?」
「分からないけど……自分のことをめちゃくちゃ良く見せたい……インスタグラマーとか写真を使うインフルエンサータイプには多いと思うけど、でもこの場合は……」
そういうと、藤岡が何かを検索し始めた。
「どうした?」
「あー……この写真、風俗の話題の時にアップされてた写真なんだけど……」
「ああ……」
「風俗とか、キャバクラの女性って、仕事用のプロフィールで写真が必要らしいんだけど……家族バレや友達バレを防ぐために、ガッツリ加工する傾向があるらしい」
「……りんごの写真をよく見せるときに、色の発色をよく見せるっていうやつと同じか?」
「んーそれは目的が違うような気もするけど!別にりんごをみかんに見せるような加工をするわけじゃないんだから」
「確かに」
「この写真は、本当にそのレベルでの加工な気がする。化粧も濃いし……」
「じゃあ、その写真だけで凪波だと判断するのは……」
「凪波の親友を名乗っていていうのもアレだけど、私にはできない」
「………じゃあ……俺も……」
分からないかもな……。
「あ、海原海原」
藤岡が身を乗り出してくる。
「おい、危ねえだろ」
「あそこ!あの建物が目的地じゃない?」
「え?」
藤岡に言われて気づいた。
さっき検索したときにネットで見た外観。
この街のランドマークとも言えるほど大きい。
あそこの上からここを見下ろしたら、俺らなんかちっぽけな存在のように思ってしまうんだろうな、と感じる。
「駐車場探すぞ、手伝え」
「ガッテン承知」
俺は、藤岡にいつものように指示を出したつもりになっていた。
でも、声がうわずったし何より、自分の心臓が痛いほど鳴り響いたし、血が湧き上がるように興奮すらしていた。
これに近しい感覚は知っている。
凪波が見つかった、という連絡を受けた時。
そして凪波にプロポーズをしようと決意して、彼女を迎えに行った時と、同じ。