Side朔夜

「ん……」
どこからともなく聞こえてくる、機械が動く音で、僕は目覚めた。
柔らかい布の上にいるのは、触感でわかる。
でも、視界が暗く、ほとんど見えない。

ここは、どこだ?
確か、さっきまでホテルの庭にいた。
凪波と、話をした……はずだ……!

「凪波!」
水の中に落ちた凪波を救わなくては、と一気に体を起こすと、目眩がした。

ゆっくりと、また倒れると頬にあたる布の擦れ具合から、薄いシーツが敷かれた硬いベッドの上、であることが想像できた。

ホテル……の部屋にしては、妙に鼻につくにおいがする。

金属のにおい。
そして消毒液のにおい。
ここは、一体どこだ。

闇の中に、小さな赤い光が浮いている。
少しずつ目が慣れてきたとは言え、光があまりにもそれぞれが小さすぎて、部屋の容貌を掴むほどには、見えない。

そうだ。スマホのライトを使えば……。
いつもスマホを入れているポケットに手を入れると、確かにあるはずだったスマホがないことに気づく。

「どこ行った……!?」
僕は手探りで周囲を探る。
ない。
どこにもない。
そういえば、今時間は何時だ……。
暗いということは……夜か?

いつもスマホを時計がわりにしているので、確認する術がない。

早く見つけないと……。
そう思った時だった。

がちゃがちゃ。
解錠する音がする。
その音が、どれだけ現状にこの部屋が施錠されているのかは容易に想像ができた。

僕は、手探りをして、武器になるものがないかを探す。
嫌な予感が、した。
僕が演じたサスペンスやファンタジーのシーンで、敵に捕まったキャラクターの状況によく似ている、と思った。

何か、何かないか。
扉がきいっと開く。
まだ、武器らしきものをつかめていない僕。

どうすればいい……!
その時、ふとあるものが光の中に浮かんでいたのが見えたので、僕はそれを手にした。