Side凪波

私は今まで、夢を見ていたのだろうか。

長いようで短い夢。
現実をもう一度追体験する夢。
自分の醜さを突きつけてくる夢。

忘れたいと、なかったことにしたいと願うこと程、どうしてこんなにも強く残ってしまうのだろう。
都合の良い思い出だけになればいいのに。

窓からの景色は。すでに夕方の時間は終わり、夜へと移り変わっている。
テレビや雑誌で見たような都会の夜が……色づいた東京タワーやスカイツリーも見えた。

高校の教室の窓から、つまらない山の景色をぼーっと眺めながら想像した世界。この世界に入り込むのを、強く深く願った、はずなのに。

どうしてだろう。
やはり心がちっとも喜んでいない。
それどころか、頭が痛いはずなのに、胸の痛みの方が強くなっている気がする。

ぐしゃぐしゃになっているメモをもう一度見る。
月が出ているのかどうか、この部屋からは分からない。

その時、ひらりと、メモが舞っていく。
私の頬に風が当たる。
部屋の扉が、開いていた。
さっき目が覚めた時は、閉じられていた扉。

一路さんが、開けたのだろうか?
一路さんが帰ってきて、しまったのだろうか。




逃げないと。
早くここから。
あの人から。





あれ?
違う。
私は、一路さんを待たないと。
話をしないと。
いけないはずなのに……?



あれ?
私は……逃げないと……いけなかった……はず?



あれ?
どちらが……正しいかった……?



……あ。
月はもう、出ているだろうか。