Side凪波

ごめんなさい。
私なんかのために。

自然と心に湧き上がった言葉。
私は、その言葉をどこかで言った気がする。
でも、私は誰に言ったのだろう。
何故、それを言ったのだろう。

太陽の光が、窓からすうっと入ってくる。
眩しい、と思った。

それがトリガーだった。
頭の中に、急に色々なイメージが入り込んでくる。

本棚いっぱいの難しい本。
誰もいない電車。
マイクが置かれている部屋。
星があまり見えない夜空。
ネオンがうるさい夜の街。
大きなベッドの上。

誰かがそこで泣いている。
声を押し殺すように。

誰？
あなたは何故、泣いているの？

ぱっと、泣いている人が顔をあげてこちらを見る。
頬がこけ、目が隈だらけ。
それを下手な化粧でごまかそうとしたのか、肌を幽霊のように白く塗り、唇は真っ赤で人工的な艶が歪に思える。

でも、それが誰なのかはすぐにわかった。
あれは、私だ。

そう思った時、どんっと、頭に鈍く強い痛みが走る。
一気に景色が闇に染まる。

私が見ていた私は、闇の中に溶けた。