しかし、そんな僕の気がかりも、8月最後の日に解消されることとなる。
事の発端は、緒方真理亜とバイト終わりにご飯に行ったことだった。バイト仲間とご飯に行くのは初めてだ。彼女の方から、「たまには夜一緒しない?」と誘ってくれたのが理由だった。
アルバイト先から、近くの「創作料理レストラン」に行くまでの道中、「これってもしかしてデートなのか」と一瞬でも頭をよぎったのは秘密だ。
「それで、例の手紙はどうなったの」
「まだ来てるよ」
「うっそー! なんかちょっとやばい感じじゃん」
オムライス。
彼女は店員さんに、「オムライス明太ソースがけ」を頼んだ。
僕はチキングリルプレートを。
土曜日の夜7時。時間帯的にちょうど人の出入りが激しい時だ。カップルらしき男女のペア、親子連れ、サラリーマンなど、多くの人で賑わっている。
店内はナチュラルテイストで、木製のテーブルと椅子が並んでいる。壁や柱には植物が飾ってあった。
大学に入ってから、初めて女の子と二人でおしゃれなレストランに来たような気がする。
「てか、どんな人が手紙書いてるのか、気になるんだけど」
ここ一ヶ月間に届いた手紙の数を伝えると、彼女は目を丸くした。どうやら僕と同じで、本気でこの謎に取り憑かれたようだった。
「僕は、『菅原隆史』を忘れられない元恋人のストーカーだと思ってるけど」
「なにそれ、健太くん、辛辣!」
いつの間にか、「加藤くん」から「健太くん」に呼び名が変わっていてドキッとする。動揺を悟られないように、僕は水を一口飲んだ。
「まあでも、その可能性はあると思うわ。気になる〜」
運ばれてきた明太ソースオムライスを口に含みながら、彼女は今にも立ち上がって犯人を捕まえたそうだ。
「だよね。まったく、いつ手紙を入れてるのか」
グリルチキンの香ばしさが、口から鼻に抜ける。
ワイン煮込みビーフシチューと迷ったが、こちらを頼んで良かった。
「あ、いいこと思いついた」
僕が料理に夢中になっている間に、彼女は何か閃いたというふうに目を輝かせて言った。
「ストーカーの女の子が手紙を入れるところを、見ればいいのよ。“現行犯逮捕”よ」
一体いつから、手紙の主は「犯人」になり、僕たちは警察になったんだろうか。
分からない。分からないけど、真理亜は遠足に行く前の子供のような表情を浮かべていた。
事の発端は、緒方真理亜とバイト終わりにご飯に行ったことだった。バイト仲間とご飯に行くのは初めてだ。彼女の方から、「たまには夜一緒しない?」と誘ってくれたのが理由だった。
アルバイト先から、近くの「創作料理レストラン」に行くまでの道中、「これってもしかしてデートなのか」と一瞬でも頭をよぎったのは秘密だ。
「それで、例の手紙はどうなったの」
「まだ来てるよ」
「うっそー! なんかちょっとやばい感じじゃん」
オムライス。
彼女は店員さんに、「オムライス明太ソースがけ」を頼んだ。
僕はチキングリルプレートを。
土曜日の夜7時。時間帯的にちょうど人の出入りが激しい時だ。カップルらしき男女のペア、親子連れ、サラリーマンなど、多くの人で賑わっている。
店内はナチュラルテイストで、木製のテーブルと椅子が並んでいる。壁や柱には植物が飾ってあった。
大学に入ってから、初めて女の子と二人でおしゃれなレストランに来たような気がする。
「てか、どんな人が手紙書いてるのか、気になるんだけど」
ここ一ヶ月間に届いた手紙の数を伝えると、彼女は目を丸くした。どうやら僕と同じで、本気でこの謎に取り憑かれたようだった。
「僕は、『菅原隆史』を忘れられない元恋人のストーカーだと思ってるけど」
「なにそれ、健太くん、辛辣!」
いつの間にか、「加藤くん」から「健太くん」に呼び名が変わっていてドキッとする。動揺を悟られないように、僕は水を一口飲んだ。
「まあでも、その可能性はあると思うわ。気になる〜」
運ばれてきた明太ソースオムライスを口に含みながら、彼女は今にも立ち上がって犯人を捕まえたそうだ。
「だよね。まったく、いつ手紙を入れてるのか」
グリルチキンの香ばしさが、口から鼻に抜ける。
ワイン煮込みビーフシチューと迷ったが、こちらを頼んで良かった。
「あ、いいこと思いついた」
僕が料理に夢中になっている間に、彼女は何か閃いたというふうに目を輝かせて言った。
「ストーカーの女の子が手紙を入れるところを、見ればいいのよ。“現行犯逮捕”よ」
一体いつから、手紙の主は「犯人」になり、僕たちは警察になったんだろうか。
分からない。分からないけど、真理亜は遠足に行く前の子供のような表情を浮かべていた。