『えー、詳細が入りました、ただ今の銃声は、どうやら犯人によるもので、自ら頭を撃ち抜いての自殺、と言うことです』


「なんやて!」
 思わずそう怒鳴り、液晶テレビに掴みかかる。そんなハズない。
「アホぬかせ! なんで蒼太先輩が自殺せにゃならんのや? ありえへんぞそんなん! こら、訂正せんか、この腐れが!」
 だが、頭にきて変えたどのチャンネルでも同じ説明が繰り返されていた。

『立てこもり中の殺人犯、風祭蒼太、所持していた銃で頭を撃って自殺、人質は無事』

 嘘や。
 ウソや。

「嘘や、黙らんかァ!」

 そう叫んだ圭は思わず事件現場を映す液晶を蹴飛ばしてなぎ倒し、手近にあった灰皿を投げつけた。
 ガツン。
 鈍い音がして液晶が壊れる。
 圭の耳にはもう何も入ってはこなくなった。
 風祭蒼太が死んだ。
 その事実だけが圭を奈落の底へ引きずりこんでいく。

 なんで?
 なんでですか蒼太先輩。

 なんであんとき俺も一緒に連れてってくれんかったんですか?
 先輩が来い言うたら、俺はどこへだって付いてきましたよ。
 なんで俺をおいて行かはったんですか?

 もしもあの時、自分が気を失わず、蒼太に付いていたら、蒼太と一緒に行っていたら、そうしたら少しはこの結果が変わっただろうか?
 蒼太はこんなことで、こんな風に凶悪犯と言われながら死ななくてすんだだろうか?
 俺は蒼太先輩の右腕で、副官で、ずっと離れたらアカンかったのに。
 自分さえ付いていれば……。
 後悔と悲しみで、どこか麻痺したような圭は身動きも出来ずただ蒼太の笑顔を、そして蒼太の肌の温もりを繰り返し思いかえしていた。


――──死。
――────痛かったやろか?

――死。
――────苦しかったやろか?

――─死。
――────寂しないですか?

――──死。
――────俺を恨んどりませんか?