届く文は開くことなく処理部屋送り。なにか事件が起こった時は天利がすべて処理してくれていたから、正直言って真宵は詳しく知らないのだけれど。

(──にしても、やっぱり冴霧様には関係ない)

 ならばなぜ、あれほどまでに冴霧は真宵を求めるのか。

 大神である以上、真宵に縛られる必要はないのに。

(たぶん……そこに私の知らない『なにか』があるんだろうな)

 真宵はずきずきと痛む頭を振って、どこまでも沈んでいきそうな思考を掻き消す。

 これは考えだしたらキリがないことだ。現時点で答えがない。

「ただ真宵さまが心配だから、という可能性はありませんか?」

 うーん、と真宵は苦笑した。

 純粋無垢な瞳で問われると一概に否定もしにくいというものだが、正直、納得はしづらい。なんといっても相手はあの冴霧だ。

「冴霧様は淡々としたお方だからなぁ……」

 耳元で囁かれた言葉が脳裏に過ぎる。

『──おまえ、死にてえのか』

 あれは脅しでもなんでもない。ただの事実だ。

 神様と結婚しなければ、真宵は死ぬ。

 なぜなら、真宵は天照大神からの加護を受けて生きていた存在だから。

 それは、真宵が人の子でありながら高天原にいる理由そのもの。

 天利が眠ってしまった以上、支えを失った真宵の体は、他の神々と魂の契りを交わさなければ生きられない──そんな運命のもとにある。残酷なことに。

 真宵がそれを聞いたのは、天利が眠る前日の夜だった。

(かか様は私に神力を使い過ぎたから眠らなくちゃいけなくなった。それを悟らせないために言わなかったんだろうけど……)

 だとしても、あんまりだと思う。

 自分のせいで犠牲になっていた天利。

 それが露見した途端に眠ってしまうのだから、結局、文句も感謝も言えずじまいだ。