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 誰がいなくなっても、日常はおおむね問題なくまわり続ける。


 生徒会長には副会長が代理で就任し、花彌子のクラス担任には別の教師が就いた。違うのは、花彌子の隣の席が空っぽなことだけ。これも半年もすれば片付けられるだろう。どこかのサッカー部のエースが飲酒で退学になったのだって、今は盛んに噂されてもやがて忘れ去られる。


 そんなふうにして、花彌子の毎日は変わらなかった。きっちりまとめた三つ編みに、目元を隠す丸眼鏡。もちろんスカートは校則通りの膝丈。地味でおとなしい優等生としての日々は、彼女に安らぎを与えていた。


 その日も彼女はいつも通りに登校し、授業を受け、帰宅しようとしていた。帰りに本屋に寄るのもいいし、友達を誘ってどこかへ遊びにいくのもいいかもしれない。まどろむような生活の中で、そう呑気に考えていた。


 そのとき、スマホが震え、メールの受信を告げる。何気なく開いて、花彌子は手のひらで額を押さえた。


「あんないい感じに別れておいて、また連絡してくるんじゃない!」


 差出人は彼女の助手。そして内容は──。
                                       〈了〉