その日、玖条(くじょう)花彌子(かやこ)は心を弾ませて登校した。


 いつもよりずっと早い登校時間。けれど早起きも気にならず、アラームが鳴るよりも早く目覚めた。長い黒髪を丁寧に梳かし、綺麗に三つ編みにした。セーラー服には皺が寄っていないか鏡の前で念入りにチェックした。仕上げに色付きのリップを塗って、準備は完了だった。


 ──昨日、好きな人に告白した。そして今日の朝、その返事がもらえるのだ。


 花彌子は呼び出された生徒会室の前で、スマホを取り出した。画面には、昨夜彼から届いたメールが映っている。


『明日の朝、時間あるかな? 告白の返事をしたいから、生徒会室まで来てほしい』


 彼とのやりとりはもっぱらメールだった。なぜなら花彌子は通話アプリをスマホに入れていなかったので。


 ドキドキする胸を押さえ、深呼吸する。生徒会室のドアノブに手をかける。


 そしてドアを開いた彼女が対面したのは、彼の──好きな人の──外場(そとば)唯人(ゆいと)の首吊り死体だった。