「……う、美海!」
体を強く揺さぶられて目覚める。視界いっぱいに柊弧の顔があって、少し驚く。
「……柊弧……」
柊弧は、泣いていた。必死に、美海の身体を揺さぶって。美海が彼の名を呼んだら、きつく抱き締められた。
「俺は……っ、また俺を愛してくれた女性を無くすのかと思った……。……もう、消えないでくれ……」
美海を抱き締める手が震えている。美海は重たい右腕を精いっぱい持ち上げて、彼の身体を抱き締めた。
「ふふ……。美織さんは……?」
「お前が言ったんだろう。過去じゃなく未来を変えないかと。……俺は、美織を追いかける過去よりも、お前と未来を描いていく方が良いと思った」
美海が目を瞠ると、柊弧はやっと微笑んだ。
「もう俺の前から居なくならないでくれ、……美海」
「……私には、柊弧と歩んでいく未来しか、見えないわ……」
部屋の中のやさしい光が、二人を包んだ。それは美海と柊弧の未来を照らす光だった。