「陽一。伝えてあった通り、明日付で副社長に任命する」

「わかりました」

帰国の挨拶のため、定時後に親父の元を訪れたところ、親父というよりは社長として仕事の話をされた。
半年前に聞かされてはいたから、驚きはない。これまでのように自由に動き回ることは難しくなるだろうけれど、その分、これまでになかった権限が与えられると思えば、この肩書きも悪くない。

「仕事とは別で、報告があります」

…………

「え?」

「は?」

そんなに驚かれるような話だっただろうか?
確かに渡米する際、向こうで永住なんてことでなければ自由にしてよいと言われたはずだが……
言質は取ったからと、念押しまでしたはずだぞ。


「どうしたものか……」

何をそこまで頭を抱える必要があるのか?
親父は文字通り、両手で頭を抱えてブツブツと独り言を言っている。

かと思ったら、パッと腕を下ろして真剣な目をして訴えてきた。

「それは無しにならないのか?」

「は?」

何を言っているんだ?

「無理だよ。相手のあることだし、何より俺が無理」

「そうか……実はな……」

そう肩を落とした親父は、とんでもない話を聞かせてきた。