ため息が出そうになったものの、辛気(しんき)くさい顔をしていてもなにも生まないと知っている。

 私は笑顔を作り、洗濯を始めた。


 けれども……。

 一橋家の娘として、いつも初子さんと肩を並べて歩いていた私が、薄汚れた着物を纏い、小間使いのように走り回る姿を見た近所の人たちが、すぐに「妾腹(しょうふく)の子だったんだねぇ」と囁(ささや)き始めた。


 妾腹の意味が最初はわからなかったけれど、それが決して褒め言葉ではないのは学校に行っていなくても理解できた。

 ひそひそつぶやく人たちの目が、今までとは違い冷たくなっていったからだ。


 しかし、私は決して悪いことはしていないという強い思いがあったので、こそこそせず堂々と街中を歩いた。