真菜さんへの取材を無事に終え、今年の文集作りは順調な滑り出しとなった。奈津美先輩が関わっているのに、ハプニングのない予定調和な進行……実に素晴らしいことだ。毎回こうだと助かるのに。
ちなみに、ダンボール三箱分の修復は、意外なことに夕方にはすべて完了してしまった。
これについては奈津美先輩の活躍も大きかったが、やはりMVPは真菜さんだろう。修復の仕上がり具合なら奈津美先輩も負けていないけど、速さが段違いだった。
「入社一年目は、『まずは基本!』ってことで、ずっとこういう本を直していたからね。もう作業工程が体に染みついちゃっているんだ」
そう言って、僕らがふたりで一冊を直している間に、真菜さんは二冊の本を直してしまっていた。
これはもう、本職の面目躍如といったところだろう。さすがは日本有数の修復家が経営する会社の社員だ。経験値が違い過ぎて、恐れ入る。
そんな話を帰りのバスでしていたら、奈津美先輩からジト目で見られた。
「悠里君、すっかり真菜さんに骨抜きね。鼻の下伸ばして、いやらしい」
「鼻の下なんか伸ばしてないですよ。客観的に見た、正当な評価です」
「どうだか。休憩中も私を除け者にして、なんかふたりで仲良く話していたし……。悠里君って、実は年上好きだったのね」
「別に、そんなことはないですよ」
プイとそっぽ向いた先輩に、しっかりと弁明する。別に僕は、年上とか年下とかにこだわりはない。変な誤解をされては困る。
「第一、その理屈だと、先輩も対象に入っちゃうじゃないですか」
「ちょっと待ちなさい! 今の言い方じゃあ、まるで私が対象に入ったら困るみたいじゃない!」
「いや、それはその……ねぇ?」
「その仕草と言葉はどういう意味よ~!」
目を泳がせながら言い淀んでいたら、奈津美先輩が突然キレた。僕の服の襟元を掴んで、ガクガクと前後に揺すってくる。
だって奈津美先輩、恋愛対象というよりは手の掛かる姉みたいだし。でも、そんなこと言ったら、絶対怒るし。いや、言わなくてもこうして怒られたけど。もう、この人は本当に理不尽だ。
結局この後、奈津美先輩はずっと機嫌が悪いままだった。何を怒っているのか知らないけれど、どうしてこうも子供っぽいかな、この人は。
ちなみに、ダンボール三箱分の修復は、意外なことに夕方にはすべて完了してしまった。
これについては奈津美先輩の活躍も大きかったが、やはりMVPは真菜さんだろう。修復の仕上がり具合なら奈津美先輩も負けていないけど、速さが段違いだった。
「入社一年目は、『まずは基本!』ってことで、ずっとこういう本を直していたからね。もう作業工程が体に染みついちゃっているんだ」
そう言って、僕らがふたりで一冊を直している間に、真菜さんは二冊の本を直してしまっていた。
これはもう、本職の面目躍如といったところだろう。さすがは日本有数の修復家が経営する会社の社員だ。経験値が違い過ぎて、恐れ入る。
そんな話を帰りのバスでしていたら、奈津美先輩からジト目で見られた。
「悠里君、すっかり真菜さんに骨抜きね。鼻の下伸ばして、いやらしい」
「鼻の下なんか伸ばしてないですよ。客観的に見た、正当な評価です」
「どうだか。休憩中も私を除け者にして、なんかふたりで仲良く話していたし……。悠里君って、実は年上好きだったのね」
「別に、そんなことはないですよ」
プイとそっぽ向いた先輩に、しっかりと弁明する。別に僕は、年上とか年下とかにこだわりはない。変な誤解をされては困る。
「第一、その理屈だと、先輩も対象に入っちゃうじゃないですか」
「ちょっと待ちなさい! 今の言い方じゃあ、まるで私が対象に入ったら困るみたいじゃない!」
「いや、それはその……ねぇ?」
「その仕草と言葉はどういう意味よ~!」
目を泳がせながら言い淀んでいたら、奈津美先輩が突然キレた。僕の服の襟元を掴んで、ガクガクと前後に揺すってくる。
だって奈津美先輩、恋愛対象というよりは手の掛かる姉みたいだし。でも、そんなこと言ったら、絶対怒るし。いや、言わなくてもこうして怒られたけど。もう、この人は本当に理不尽だ。
結局この後、奈津美先輩はずっと機嫌が悪いままだった。何を怒っているのか知らないけれど、どうしてこうも子供っぽいかな、この人は。