確かにこれは奈津美先輩が言う通り、僕にとっても願ってもないチャンスだ。
司書の生の声を聞けるのは僕の将来を考えてもプラスになるし、本の修復技術にも興味はある。図書館の業務において、本の修復は避けて通れない道だし、この機会に色々話を聞いておきたいところだ。本当に、僕にとって得しかない。
「先輩……。僕、書籍部に入って初めて、先輩が部長で良かったと心から思えました」
「そうでしょう、そうでしょう。……って、『書籍部に入って初めて』ってどういうこと?」
「先輩が起こした問題の後始末に奔走した、この一年三カ月。ようやくそのご褒美がもらえた気分です」
「ひ、ひどい! 持ち上げているように見せてこきおろすとか、ひど過ぎ! 悠里君の鬼! 悪魔!!」
何やら奈津美先輩が喚いているけど、今はまったく気にならない。というか、奈津美先輩、涙目になっているけど、どうしたのだろう?
ああ、そうか。初めて部長として褒めてもらえて、感動しているのか。
うんうん、今は存分に褒めてあげますよ。先輩えらい! グッジョブです!
「僕もまったく異存はありません。今年の文集は、これでいきましょう!」
「あっ、そう! 喜んでもらえて何よりだわ! フンだ! 悠里君の図書館バカ!!」
「つきましては、先輩もさっさと禊を済ませてきてくださいね。無駄な抵抗をしないで、愛想よく真面目に補習してきてください。夏休みに入ったら、すぐに取材なんですから」
「やっぱり悠里君、きらい! ドS、いじめっ子、人でなし!」
テンションマックスな僕の隣で、奈津美先輩も感極まったのか、「ふえーんっ!」と泣き出してしまった。
こうして、書籍部内文集会議は、和やかに終わりを迎えたのだった。