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 復活した先輩が提示した文集の記事テーマは、次の三つだった。

【書籍部の歴史】

【現役図書委員が選ぶ図書室の隠れたオススメ本ベスト5】

【書籍部卒業生の職場体験&インタビュー】

 この内、前者ふたつは鉄板ネタ。言ってしまえば、毎年の恒例記事といったところだ。
 部の歴史をまとめるのは、代々部長が引き継いできた、この部の数少ない伝統。前部長までがまとめてきた歴史に、自分の代の出来事を書き加えていくのが、部長の大切な仕事らしい。……まあ、活動実績なんてないに等しい部なので、大した継ぎ足しはないけれど。

 オススメ本の方も、一種の伝統と言っていいだろう。書籍部というだけあって、毎年少なくともひとりは図書委員になる部員がいる。去年や今年の僕のように。そんな部員たちが好んで書いてきたのが、このオススメ本ランキングだ。ランキングなら個人の嗜好ありきで手早くまとめられる。なので、図書委員の部員がこぞって毎年記事を書き、結果毎年の恒例となってしまったのだ。

 と、こんな感じで、前のふたつは考えるまでもなく出てくる記事テーマと言える。
 よって、今年の目玉=奈津美先輩が考えたオリジナルテーマは、三つ目の『書籍部卒業生の職場体験&インタビュー』ということになる。

「今回の取材、きっと悠里君にとって良い経験になると思うのよね」

 そう言って、奈津美先輩は僕に愛用している手帳を見せてきた。そこに書かれていたのは、今回訪問するふたりの人物の名前と、その職業だ。

 今回訪問するのは、司書になったという初代部長と、奈津美先輩と今も交流があるという修復家のところらしい。奈津美先輩が僕を書籍部へ勧誘しに来た時に引き合いに出してきた、あのふたりだ。名前は、司書の方が清森(きよもり)陽菜乃(ひなの)先輩、修復家の方が清森真菜(まな)先輩というらしい。

 名前からもわかるかもしれないけど、このふたり、実の姉妹とのことだ。
 だから、奈津美先輩→真菜先輩→陽菜乃先輩とバイパスをつなぎ、取材の話を取り付けたらしい。