製造の過程で酵母がタンクの底に沈んでいくので下面発酵と言われる。
低温発酵のために雑菌が繁殖しにくく管理がしやすいため、大量生産されているビールはこのタイプが多い。
ラガーの中でも〝ピルスナー〟という種類が主流となっている。
一方、〝エール〟は、上面発酵。
こちらは昔ながらの製法で、のど越しのラガーに対して濃厚で芳醇な香りを楽しめると言われている。
当初この店のお酒の棚は、他社のラガーばかりだった。
そこに参入したくて、エールビールを勧めたところ差別化に成功して、それからずっとエールを納入している。
その流れでエールの新商品、朱雀も採用となったのだ。
「あれはコクがすごいね」
「ありがとうございます」
十文字くんは丁寧に腰を折る。
「でも、キンキンに冷やした他のビールには劣るんだよなぁ」
店長はかなりののんべえで、店頭に並んでいるビールはすべて試飲済みだ。