『さくり、今日の夜シフト入ってたよね? 代わって!』

 放課後、杏奈から突然送られてきたメールに、何事かとさくりは返信した。

 杏奈は大学三年生、バイト先だけでなく休日によく二人で遊びに行ったりする仲良しの先輩だ。

 姉御肌でいつも笑顔を絶やさない、後輩からも店長からも頼りにされている人気者。さくりも、仕事が出来て何事にも積極的、お洒落で格好いい杏奈に憧れている。

『大丈夫ですけど……。先輩がそういうの珍しいですね。私はしょっちゅう代わってもらってるけど』
『もう怒りが収まらなくてさ! 動いてないと発狂しそう!』
『発狂! なんかあったんですか?』
『彼がね、ああ話した方が早いや。今からいつもの所に集合でいい?』

 返信の速さから、これは相当だな……と察したさくりは「了解!」と返した。

 そうして、駅前のコーヒーショップで合流。案の定先に来ていた杏奈は、さくりがカフェモカを口にするより早く木箱をテーブルに叩き置いた。隣の席のサラリーマンが、ビクッと体を震わせるくらいの音と共に。