――アンティークの家具が並び、いたるところに大小様々なオルゴール(オルゴールもほとんどがアンティークらしい)が置いてある店内。値札は無いけど、どれも売り物と聞いている。そして、奥にカウンター席が五席。四人がけソファーテーブルが一つ。

 質屋には質流れ品の高価な時計や宝石、ブランド品が並んでいるものと思っていたさくりは、家具とオルゴールしかないこの店に初めて来た時「この店、大丈夫だろうか」と心配した。

 響生が売り物のチェストから、「店の雰囲気に合わないからここに仕舞っている」と質流れ品を出してきた時は、「本当にこの店、質屋なんだろうか」と若干引いた。

 そんな店だが、暇さえあれば「ラ・ルーナ」にいるのは、美味しいケーキを出してくれたり、時には宿題を見てくれるから。

 幼馴染の響生が、歳の離れたさくりを、本当の妹のように可愛がってくれるからだ。居心地がとてもいい。

「そっかそっか。お金払えば、オルゴール直して貰えるんだね」
「さくりのオルゴールは、もともとは僕のものだからお金は取らないよ」
「ううん。私のじゃなくてね。杏奈先輩の」
「杏……さっき言ってた、バイト先の?」
「うん」
「それはまた意外なところから」

 シフォンケーキとお茶を出し、響生はさくりの隣に座った。