じっとり物言いたげに見つめてくる響生から目をそらし、さくりは店内のオルゴールを見渡した。

「響生さん、いま直してるオルゴールはなんて曲なの?」
「誤魔化した」
「してません。この間聴いたオルゴールの音色が忘れられないから、そっちはどういうのかなぁって思ったの!」

 ああ、と響生の表情が一瞬で明るくなる。

 さくりがオルゴールに興味を示したのが、嬉しくてたまらないという表情。

「『エリーゼのために』だよ」
「ああ~オルゴールといえばコレ的な曲だ。えっと……弁だっけ? 多いと豪華なやつ」
「ざっくりな覚え方だなぁ……間違ってないけど。これは五十弁、この間よりさらに“豪華”です」
「うわあ、ドヤ顔がすごい」
「クリスマスに間に合わせたかったのに、取り寄せてる部品が届くの、まだかかりそうなんだよな……。これだとお年玉になっちゃうよ」
「お年玉?」
「さくりの」
「お年玉ならお金のほうが嬉しいけど」
「…………」

 うわマズい。思った時にはもう遅い。

 前言撤回! と、さくりは叫んだ。目の前では響生がカウンターに突っ伏している。こんなに分かりやすくショックを表す大人は、彼以外にいるだろうか。

「いや。いいんだ。確かにお年玉は現金じゃなきゃ……。そもそもクリスマスプレゼントをお年玉に回そうと思ってる時点で、僕の愚かさが露呈している……」
「お、お金も欲しいけど、オルゴールも欲しいから大丈夫だよっ」