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アンティーク家具、オルゴール、コーヒーの香り。
店内を呆然と見渡してから、杏奈はさくりの耳元へ囁いた。
「ここ本当に質屋なの?」
「信じられないだろうけど、本当に質屋です」
「いらっしゃいませ。お待ちしてましたよ」
響生がカウンター内でにこりと微笑む。二人を席へ案内すると、杏奈にはコーヒー、さくりには梅昆布茶を出した。
「イケメンカフェじゃなくて?」
「質屋」
なぜ私だけ梅昆布茶なんだ――。しかも今日はちゃんと湯呑みで出してきやがった。
更に言うなら、この湯呑みはさくりが幼稚園の時使っていものだ。響生は、どこからこれを持ってきたのだろうか。なんか怖い。でもお茶は相変わらず美味しい。
「あの、オルゴールが直ったと聞いて……」
「ええ。直りました。素敵なオルゴールですね。全体に施された彫刻も素晴らしい職人技、オルゴールはスイス老舗のもの。骨董市でこれを見つけた彼氏さんはいい目をお持ちですね」
「ただのガラクタじゃないんだ……」
響生の言葉に、杏奈は目を大きく開いた。