その店は、駅前の商店街中心から一本横に入った小路にある。

『La Luna』

 煉瓦の壁に、曇りガラスの窓がある木製のドア。小さなシルバーのピアノ型プレートの看板が目印。

 店名と外見が小洒落てカフェのようなので、たまに間違えて入ってくる客がいるが、ここは――質屋だ。

 アンティーク家具とオルゴールで溢れていて、さらりと長い髪を束ねたいかにも人の良さそうな青年が、「いらっしゃいませ」と微笑み迎えてくれる。さらには、コーヒーや紅茶まで出てくるのだが。

 この店は、れっきとした質屋なのだ。