ということは、私が第二総務部の正体についてあれこれ考えをめぐらせていた間も、彼はしっかり関係者だったということだ。
 あれっ、ということは、ということは……。
 考えがまとまる前に、阿形さんがついと柊木さんを指さす。
「ついでに言うと、柊木さんの同期」
「えええ!」
 もうダメだ、情報量が多くて頭がついていかない。
 柊木さんが眉をひそめる。
「その『えええ』は、なにに対してだ?」
「いえっ、その、第二総務部の方々に、同期とかそういう関係性があったことがまず、驚きというか、衝撃で」
「俺たちだってここの社員だ。横のつながりも、それなりにある」
 そうだったのか……。
 特殊任務のために集められた、特殊な訓練を受けた人たちっていう可能性も考えていたんだけれど。普通に先輩社員だったのだ。
 それはそれで感動だ。
「で」と柊木さんが机をトンと叩いた音で、はっと我に返った。
「ここからがようやく、本題だ」
「はい」
「国内営業本部の社員から〝依頼〟があった」
 依頼……というと。
「あの伝言板を使ってですか?」
「そう。副本部長のパワハラに悩んでいるという相談だった」
 だから〝副本部長〟のワードに三人が反応したのか!
「俺たちは、日常の業務中の情報がもっとも手に入れづらい。会議に出席することもできないし、さすがにオフィスエリアをそううろつくわけにもいかない」
「なるほど。それで調査員が必要なんですね」
「だが、むやみやたらに増やすわけにもいかない。それなりに、というか、かなり人を選んでる」
 その言葉は私を有頂天に導いた。選ばれた感、すごい!
「俺たちはべつに、人目を忍んで動くことが第一義なわけじゃない。ただ人目につくと、できることが減る。それだけだ」
「はい、わかります」
「蔵寄に聞いたところ、仲鉢副本部長はたしかに横暴で品性に欠ける一面があるとのことだった。言葉を選ぶあいつが言うんだから、相当なんだろうと思う」
「仲鉢副本部長かあ……」
 白くなりはじめた髪をオールバックにし、いつも肌や歯や目をぎらぎらさせている、ゴルフ大好きとの噂の副本部長を思い描いた。
 私は直接仕事でかかわったことはない。ただ全社をあげての納会などで、会話したことはある。若い女性社員ということもあって、そばに呼ばれるのだ。