「例の、第二総務部の件、その後どうなったの?」
「よくぞ聞いてくださいました!」
 私は待ってましたとばかりに食いついた。連休前から彼は出張に出ており、あの一件の顛末を話して聞かせるタイミングがなかったのだ。
 場所を変えるほどの話でもなかったため、営業部のほうへ戻る彼について席を立ち、部署と部署の間にあるキャビネットのそばで立ち話と相成った。
「えっ、第二総務部と会ったの?」
「そうなんです! 柊木皇司さんという方でした」
「名前まで知ってるんだ」
「ご本人が名乗ったんですよ!」
 今でも思い出すと身体が震える、あの瞬間。柊木さんが社員証を私に見えるよう掲げ、自分のフルネームを口にしたとき。
 親睦会費の行方も含め、一連の出来事を熱っぽく語る間、蔵寄さんは感心したように「へええ」としきりにうなずく。
「生駒さんが認められたってことだね」
「そう思っていいんでしょうか」
「ほかに考えようがないよ」
 さすが蔵寄さん、ほめ上手でもある。私はすっかりいい気分になり、えへへと相好を崩した。けれどすぐに我に返った。
「でも……逃げられてしまったわけで」
「また会えるんじゃない? うちの社員だったんでしょ?」
「社員ったって、ほかの事業所とか工場とか合わせたら一万人以上いるんですよ」
「伝言板がこの本社にあるんだから、第二総務部もここにあるんじゃないかな」
 そういえばそうだ。
 期待しすぎないよう自分をけん制するうち、大事な前提を見失っていた。
「会えますかね……」
 不安と期待が声に出ているのが自分でもわかる。
 蔵寄さんはネガティブな予感を吹き飛ばす、爽やかな笑顔でうなずいた。
「僕は会えると思うな」
 そしてその言葉は、あたったのだった。
 しかも、わりと直後に。

 昼食は席で簡単に済ませるか、外に食べに出ることが多い。最上階に食堂があるので、そこで安く済ませることもできるのだけれど、ほとんど使ったことがない。
 大音量でテレビが鳴っているのと、男所帯のため回転率が高く、ゆっくり本を読みながら食後のコーヒーを一杯、的なことが気が引けてできないからだ。
 ただこの日はふと気が向いて、会社の福利厚生にあやかってみようと思った。
 だれかと相席になっても、連休というネタがあれば話題にも困らない。むしろ意外性のある話を聞くことができたりして、楽しめるかもしれない。