壮悟くんが、はぁぁっ、と大きく息をついた。
「シナリオライターって、よく自分の話にカメオ出演するんだよ。自分の顔、キャラに使うの。壮悟は主役張れる顔だねってCG担当に言われて、別に主役でもいいよって答えたら、マジで沖田の顔のモデルにおれが使われた」
 言わないで。それ以上、言わないで。あたしも気付いていたから。壮悟くんと沖田さん、似ているって。
 あたしはもう顔が熱くて熱くて、声も言葉も出なくなってしまった。だけど、壮悟くんは逆だ。冷静じゃなくなると、言葉が止まらなくなるみたい。
「反対意見もあったよ。沖田が死ぬシーンもあるのに、白血病のおれの顔を使うのは縁起がよくないって。妹もブチ切れてた。バカ兄貴とは一生口を利かないとかって。まあ、嘘だったけど。いつ配信になるのかって、最近はしょっちゅうメッセ入れてくる」
 壮悟くんが黙る。空調の音が聞こえる。あたしは無理やり口を開いた。
「び、病気のこと、ピアズの運営チームにも言ってあるんですね?」
 あたしは、誰にも何も告げていない。
「言ったよ。シナリオの採用通知の返信で一発目に書いた。おれはもうすぐ死ぬ病人だから配信を急いでくれって。そしたら、管理部からまたすぐ返信があって、ありえないことに、署名付きだった。飛路朝綺っていうプログラマからのメッセで。事情を聞かせろって」
「朝綺先生が?」
 パズルのピースがはまり始めた。壮悟くんと誠狼異聞と朝綺先生とラフ先生と、偶然のように引き合わされた物語の因果は、きちんと全部、つながって存在した。
「おれは正直に事情を書いて送った。白血病の再発と家の借金、いっそ死んでもいいと思ってること、新撰組のシナリオに命を懸けてんだって話。これが配信されたら、あとはもう何の後悔もないってことも話した」
「朝綺先生は何て返信したんですか?」
「そのときは別に意見したりせずに、何日か経って、正式の依頼書を送って寄越した。響告大学附属病院での臨床試験に協力してほしい、その話に乗れば格安で治療が受けられるっていう内容の書類だった」
 最初からつながっていたんだ。この病院に壮悟くんが現れたこと。壮悟くんと朝綺先生が同じ系列の治療を受けること。朝綺先生が誠狼異聞のテスターであること。
 そこにあたしが加わったのもきっと、変わることのない運命の定められた歯車だったに違いない。